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シェクター STタイプ リフィニッシュ

アッパーホーンバック部に大きな塗装剥がれが生じたシェクターのリフィニッシュ依頼。

純正塗装は塗膜を薄く仕上げた"シン(thin=薄い)ラッカー" 塗装剥がれの修正の意味合いも含みますが、同色での補修ではなく、どうせなら違う色にとの事で着色なしのナチュラル シンラッカーで仕上げます。

全てのパーツを取り外し、先ずは純正塗装を剥がすところから。

ラッカーをヘアドライアーの熱で軟化させ、ヘラを使用し塗装を剥がしていきます。 極薄のラッカーを吹き付けるのみで塗装を完結しないといけませんので、いつも以上にミスが命取り。今後の作業の手間を増やしたくはありません。 木地へのダメージを最小限に抑えるため、地道に丁寧な作業が求められます。

ドライヤー+ヘラでの剥がしを行うと、たいていの場合下地層が残りますのでペーパーで除去。 今回のような、"目止めの工程を省き着色が行われている個体"の塗装剥がし作業で最初からペーパーを使用すると、木目(導管)にカラー塗料が詰まってしまい後々面倒になってしまいます。 カラー層まで除去して初めて、ペーパーで削り取る作業を行います。

極薄塗装はコンと当てた軽い打コンでも木部の凹みを生じることが多く、この個体も小さな凹みがあちこちに点在しておりましたが丁寧に除去。

軽さはそれほどでもありませんが、シミもなく木肌の白いスワンプ・アッシュ。 ナチュラルフィニッシュに限らず、木地調整が最終的な美観を決定すると言っても過言ではありません。 明るい照明の下、目を凝らして木肌の状態を確認しながら作業を進めます。 その後、第一の塗装へ。

ラッカーウッドシーラーを木地に染み込ませるように塗り付ける"捨て塗り"と言われる塗装工法を取りました。 何も塗装がなされていない木地には、付着した液体(塗装)を吸い込む(染み込む)性質があり、導管の荒いアッシュやマホガニー等はこの傾向がより強く、染み込みのムラにより吹き付けを行った塗装面の均一性が崩れてしまいどうしてもザラザラした手触り・見た目となります。 導管を埋めてしまえる通常の塗装手順を踏むことができれば、気泡が発生しない限りこのザラつきは無視し何度か吹き付けを重ね下地層を形成しますが、今回のような極薄塗装ではよりシビアにこのザラつきと向き合う必要が生じます。

前工程で一旦木地に塗装を吸わせ、ザラついた塗装面をかるーくサンディング。 少しでも削り過ぎ木地が露出すると、再度ボディ全体の塗装を剥ぎ、木地調整からやり直しです。 仕上げにクリアラッカーを少量吹き付けますが、この工程を挟むことで "無塗装に限りなく近いが吸い込みが発生しないボディ"という状態を作ります。

仕上げにクリアラッカーを吹き付け、1週間程度乾燥させたボディ。 塗膜が限界まで薄く、バフ掛けを行うと摩擦熱で木地まで塗装が剥げますので行えません。 バフ掛けを行わずに塗装面の均一性を保たなくてはならないので、塗料の粘度を微妙に調整し吹き付けを行います。 塗料と共に付着してしまたダストを研磨で取るという作業も出来ませんので一発勝負。 空気中に浮遊しているチリ・ホコリが少ない作業前の朝一に吹き付けます。

組み込み前に指板面の保湿・クリーニングを。 料金に含んでおりませんが、リフィニッシュ後の綺麗なボディには綺麗なネックを取り付けたいので、必ず行う作業です。

各部パーツを組み込みセットアップ。 日本語が破綻していますが、ほぼ無塗装と形容しても語弊がないほどに薄く塗りあげた今回のリフィニッシュ。 木部保護としての意味合いではさすがに力不足ですので、塗装手順と同じく取り扱いには多少シビアになっていただく必要が有りますが、塗装が薄いボディの鳴りを存分に楽しんでいただけるのではないでしょうか。 塗装が薄い=音が良いでは決してありませんが、どの様な塗装工法においてもその仕上げに必要な手順をしっかり踏み、意味のある施工を行うことが何よりも大切だろうと思います。

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