真空管交換 マーシャルJCM900
エレキギターやベースを出力するために用いられる機材がアンプです。
アンプには大きく分けて『真空管アンプ』と『トランジスタアンプ』が存在します。
電気信号を増幅するのに、真空管を使うか、トランジスタを使うかの違いです。
真空管は消耗品で定期的に交換が必要であったり、衝撃に弱いというデメリットがあります。
生っぽい、立体感のある音と言われています。
一方のトランジスタは耐久性、安定性も高く、ノイズにも強いパーツです。
機械的ではあるものの、煌びやかなサウンドイメージです。
昔は真空管しかありませんでしたが、最近ではサウンド面でも優れたトランジスタアンプがたくさんあります。
しかし、デメリットのたくさんある真空管アンプのほうが根強い人気があるように感じます。
いまだに真空管をこれほど重宝しているのは、音楽業界ぐらいではないでしょか?


今回の修理依頼は電源は入るものの、音が出力されないというものでした。
アンプを修理する際にまず、電源が入るかと、ノイズが出ているかを確認します。
「電源が入らない」、「電源は入るが、ノイズすらもでない無音状態」という症状の時にはメインヒューズや、アウトプットヒューズが断線しているということが多いです。
ヒューズとは、アンプ設計上想定外の大きな電気が流れた際に、断線しそれ以降に大きな電気が流れないようにして、アンプやスピーカーを守ってくれるパーツです。
ヒューズ自体の劣化で断線してしまうこともあるので、予備を持っておくことをオススメします。

ヒューズを裏パネルから取り外せるアンプと、ボディーからシャーシを外さないと取り出せないアンプがあります。
今回のアンプは裏パネルから取り出せます。

写真では見にくいですが、アウトプットヒューズが両方断線していました。
ヒューズ自体の劣化を疑って、新しいヒューズを付け電源を入れてみても、同じようにヒューズが断線してしまいました。
内部になにか原因があるようです・・・。

真空管を見てみると、ずいぶん劣化しているようでした。
試しに、同等品の真空管を差して、電源を入れてみると、ヒューズは断線しませんでした。
原因は真空管。
さっそく交換です。
真空管の交換は、古い真空管を抜いて、新しい真空管を差すだけですが、交換後の調整が不可欠です。


バイアス調整というやつですね。
真空管に与える電圧の調整です。
バイアス調整の必要がない、自己バイアスというシステムのアンプもありますが、ほとんどの真空管アンプは真空管交換時にバイアス調整が必要です。
回路図、基板とにらめっこして、バイアス調整のポイントを探します。
JCM900はとてもわかりやすい!!

ダミーロードと言われる疑似スピーカーを接続して、普段の使用状況と同じ状態で測定します。
数値を確認しながら、ポットを回して調整していきます。
高すぎても、低すぎても音はちゃんと出ません。
めちゃくちゃな設定になっていると、真空管が熱を持ちすぎて、周辺パーツの損傷に繋がったり、ひどい場合には火事になる恐れもあるので、慎重に行います。
真空管を長持ちさせたい場合は低め。
真空管の寿命が短くなってもいいから元気な音が欲しい場合は高め。
など設定数値の許容範囲内で、目的に合わせて調整していきます。
(わかりやすく高め、低めと表現していますが、バイアスは浅い、深いと表現されることが多いです。)
調整ができたら、この状態で3時間ほどチェックして、問題なければ組み込みです。

組み込みが完了したら、実際にギターとスピーカーを繋いでランニングテストを行います。
1日3時間ほどのチェックを3日程度行って問題なければ完了です!!
作業とチェック時間がかかってしまいますが、安心安全に音楽を楽しんで頂くためには必要な時間です。